ピーンポーン




先生の帰りをつげる音




昨日鍵を開けたまま寝ちゃってたから




" 帰ったらインターホン押すから鍵閉めて
今日は18時過ぎ "




ってショートメッセージがお昼に来てた




ドアを開けると先生が立っていて




「おかえりなさい」




思わず笑みがこぼれる




「あぁ」




相変わらず淡白な返事




「お弁当!すごく美味しかったです!」




「そうか」




「先生ってほんとに優しいですよね」




「べつに」




こんな一方的な会話でも嬉しくて舞い上がってしまう




今まで誰かと話してるだけでこんな気持ちになったことなんてなかったのに…




なんか変な感じ




「飯作っとくから風呂行ってこい」




「はい!」




鏡に映る傷が日に日にマシになってく気がした




なにより体調がすごくいい




前は朝起きて立ち上がるのも苦しかったのに




今は毎日が楽しい




兄のことを忘れて過ごす日々が




少しでも長く続いてほしいと願ってしまう




私の幸せの裏で




誰かが不幸になってるなんて想像もしてなかったから