「家どっち?」




校門で先輩に聞かれて言葉に詰まった




地図見ないとまだ方向が…




「えっと…最近引越したばかりで地図見てもいいですか?」




「はは、いいよ」




「ありがとうございます…えっと左です…」




先生が書いてくれた紙を見てそう言うと




「手書きー?杏ちゃんめっちゃ字綺麗」




「あ、いや…これはお父さんが…」




嘘をついたことに少し罪悪感




でも本当のことなんて絶対言えない…




「優しいお父さんだね」




「はい…」




ほんとに優しい




普段は冷たいけど…




「この辺初めて来たかも」




「先輩はよくこうやって女の子と帰るんですか?」




「帰んないよ?杏ちゃんだけ」




そう言って先輩がニコッと笑う




「なんで私なんですか…」




「可愛いから?」




「からかわないで下さい」




「最初見たとき天使かなって」




こうやって女の子が喜びそうな言葉を何の気なしにぽんぽん言えちゃうんだろうな




「それに小動物ぽいとこも結構ツボ」




「小動物…」




確かに身長差すごいけど…




小さいの気にしてるのに酷い




「怒った?」




「怒りました…」




「ごめんね?」




言葉とは対照的に笑顔の先輩




「もういいですー…」




避けるように早足で歩くけどすぐ追いつかれてしまう




足長すぎ…




先輩を軽く睨むと




「またその顔…あんま煽ると抱きしめちゃうよ?」




煽る?




それに抱きしめちゃうって…