「何にするー?」




先輩の無邪気な笑顔を見てると不思議と怒る気が薄れてくる




「メロンパンにします…」




「メロンパンとクリームパン1つずつ」




「お金…」




「いいよこんくらい
無理矢理連れてきたんだし奢らせて?」




「でも…」




「行こ!」




先輩に連れられて初めて見る空き教室に入った




「ここ俺のお気に入り
誰か連れてくるのは杏ちゃんが初めてだけど」




「そうなんですか…」




なんで私なんかに構うのかな




他に連れてこれる子なんてたくさん居るはずなのに




「美味しいーー…」




メロンパン…




昔から大好き




甘くてサクサクで最高




「…なんですか?」




視線を感じて先輩のほうを見ると




こっちを見てニコニコしてる




「可愛いなーって」




「どうせ子供って思ってるんですよね」




食べ物に反応するのやめよって昨日決めたばっかりなのについ癖で…




「全然?
その反応わざとかなって思うくらい可愛いけど」




「先輩って変わってますね…」




「なにが?」




「すごくモテるのにわざわざこんなのとお昼食べたり彼女って嘘言ったり…」




「こんなのって本気で言ってる?」




「え?」




「無自覚で鈍感なのも可愛いけど
変な奴につけ込まれないか心配」




「何言ってるんですか?」




先輩の言葉の意味が全く分からない




「俺のーって書いときたいくらい」




そう言いながら突然私の足に頭を置いてきて




「ちょ…」




「うーん…5分だけ」




そう言って目を瞑る先輩




安心しきった寝顔…




本当に整った顔




なんでだろ…
先輩を見ているのに少しだけ先生と重ねてる




髪の色はもっと暗かったよな…とか




まつ毛は先生のほうが長いとか




ここに居るのが




先生だったらなんて思ったり




「今日は積極的だね」




そんな声にハッとして一気に意識が戻る




気づくと自分の手が先輩の髪に触れてて




そんな私の手に先輩が手を重ねて




意地悪な笑みを浮かべてる