車の窓に映った見慣れない夜の街




会話の無い静かな車内




たまに一瞬視線を向けてしまう整いすぎた先生の横顔




このまま時間が止まってしまえばいいのにと思った。




「飯、希望ある?」




「特に…ないです…」




何度も聞いたことあるはずなのに
近くで響いた先生の声に動揺してそう返すのが精一杯




「了解」




低くて冷たい声が記憶されていく




車を降りると、すごく綺麗な高層マンションに向かう先生の後ろを早足で追いかけた。




エレベーターに入ると先生は慣れた手つきで12のボタンを押した




無言なのに "気まづい" というより
"落ち着く" に近い不思議な感覚




あっという間に十二階にたどり着き、先生が玄関の鍵を開ける




「適当にして」




適当にって…




私が固まっていると




「とりあえずソファー座ってて」




察したようにそう言い捨ててキッチンに向かった