仁の大きな体にはキッチンが小さく見える。

結婚することを決めてからこうして仁が奈央の部屋に来ることが増えた。
それまでは一度も部屋の中には入ったことがなかった仁。

奈央を迎えにスタジオへ来てから仁がそのまま奈央のアパートへ寄ったり、帰りに夕飯を二人で外食してから奈央を送ることが増えて、以前よりも確実に二人の時間が増えていた。

仁との時間が増えれば増えるほど、奈央は仁の大きな優しさに包まれて自分の心が満たされていくのを感じた。

一方の仁は、奈央の部屋へ来るたびに棚の上に飾られた絃の写真が目に入る。

絃は今の自分たちをどう見ているのだろうか・・・
複雑な気持ちがこみ上げそうになると仁は玄関に並べられた自分が奈央に贈ったキーホルダーたちを見る。

仁はスープを作りながら今日も棚の上の絃が目に入った。
思わず視線をそらして手元に集中する。