「初めから俺は奈央が好きだった。だからこそ、絃が死んだとき悲しすぎて涙も流せない奈央をどうしても抱きしめたかった。守りたかった。俺がそばで支えたかったんだ。」
「・・・」
「でも気持ちを奈央に伝えることはできなかった。絃をおもうと言えなかった。ただそばにいて、奈央が必要としてくれるときに支える、それだけで我慢しようって思ってたんだ。」
仁がつらそうな瞳で振り返り絃のお墓を見る。
「だめな兄貴だよな。この気持ち、どうしても抑えれないんだよ。ごめんな、絃」
奈央は今まで絃が亡くなってからずっと隣で支えてくれた仁を思い返していた。
どんな時も隣にいてくれて、どんな時でも励まして守って支えてくれた。
目薬を拭いたティッシュをギュッと握りしめながら奈央は仁を見る。
「奈央」
「ん?」
仁がもう一度奈央を見る。

「奈央の気持ちが一生絃にあってもいいんだ。」
「・・・?」
「絃の次でもいい。だから、俺のことも見てほしい。」
「仁・・・」
「少しでも俺を見てくれたらそれでいいんだ。これからも奈央が必要としてくれるのならどんなことも一緒に背負う。」