愛さずにはいられない

絃が亡くなってから8年になろうとしているとき。


奈央は自分の足で、また一歩前に大きく踏み出した。



一曲歌い終えると奈央はその場に座り込んだ。

仁が慌てて奈央に駆け寄る。
「平気か?」
奈央は集中しすぎて息が上がっていた。

全身がフルフルと震えている。

仁が震える奈央の両手を自分の手で包み込んだ。
心配しながらその顔を覗き込む。