愛さずにはいられない

いろいろな検査をしてから奈央は待合室に戻り診察を待った。
奈央を待っていた仁は立ち上がりうろうろと窓の前を歩き回っていて、検査を終えた理恵と奈央が待合室に戻ると二人に笑われた。
「診察室に呼ばれるのはまだかかりますから、どうぞ座って、奥さんと何かお話でもして待っていてくださいね。携帯電話もここは使用可能ですから。気を紛らわせていてくださいね。」
理恵は微笑みながら仁にそう伝えて去って行った。

「前に私のお父さんがお世話になった時の先生の奥さんだって。」
「そうなの？」
奈央も仁の緊張をほぐそうと話しかける。
「雰囲気、似てるかも」
「でしょ？」
「優しそうだな。」
「うん。」
でも会話が長くは続かない。
二人は緊張しながら診察室に呼ばれるのを待った。

「桐ケ谷さん」
看護師に呼ばれて診察に入ったのは病院についてから一時間が経った頃だった。