楽しみを膨らませた二人は車で次の場所に移動していた。

廣瀬から絃のメッセージを預かった日以来、奈央はリハビリを兼ねて定期的にスタジオを借りていた。廣瀬も好意的に奈央のお願いを受け入れてくれて、毎回使用する時間にスタジオに入ると廣瀬からの差し入れが用意されていた。

それでも、はじめは奈央はスタジオの扉を開けることができなくてその場で時間が過ぎて帰ったり、スタジオの中に入れるようになってもそこに座り込んで動けなくなりそのまま仁に迎えに来てもらったりした。

仁も奈央を心配して、スタジオに行く日は二人の休日の月曜日にするように奈央に言っている。

仁は奈央からの連絡がない限り、事務所の入り口に奈央を降ろしてからずっと近くで待機してくれている。約束の時間になっても奈央が戻らないときは連絡をくれる。

そのタイミングで奈央が過呼吸になっていることも数回あった。
奈央はそれでもリハビリを辞めない。

仁も奈央を止めない。