愛さずにはいられない

奈央はギターを何とも言えない表情で見つめて撫でる仁を見て心がギュッとつかまれるような気持だった。
涙こそ流れなくても顔が泣き顔になる。

奈央は思わず仁の手を握った。

絃は常にギターを持ち歩いていた。
奈央の記憶の中の絃はいつだってギターを手にしていた。
大きな手。長い指で弦をおさえながら、まるでギターが恋人でもあるかのように絃はギターを見つめながら弾いていた。その姿が思い浮かんで心が切なくて苦しい。

仁は握られた奈央の手を握り返しながらその表情を見た。
奈央の表情は今にも泣きだしそうなそんな表情をしていた。

「それともう一つは絃から奈央へのメッセージだ。」
廣瀬の言葉に奈央は驚いて廣瀬の方を見た。
廣瀬が自分の机の中から譜面用の紙をだす。