愛さずにはいられない

そしていよいよショーが始まる。
その時。

「奈央?」
仁とは違う声で奈央は呼ばれて立ち止まった。
ちょうどショーが始まる前。席に移動しようとしている時だった。
仁も奈央と一緒に立ち止まる。
「蓮水奈央?」
奈央は再び呼ばれその声の方を見た。

「社長・・・」
そこには奈央と絃が一緒に所属していたレコード会社の社長が来ていた。
「大人になったな。」
奈央は絃と共にかなり世話になった。
奈央ははっとして隣にいた仁に社長を紹介した。
「私と絃がいたレコード会社の社長の廣瀬さん。」
「初めまして。絃の兄の桐ケ谷仁と申します。」
仁が営業用の表情で廣瀬に挨拶をする。
廣瀬は中肉中背のやり手の社長として業界では有名だった。