愛さずにはいられない

スタジオを出た時点で日付が変わっていた。
奈央が時計を見ると午前2時を過ぎている。
「今日はもう・・・眠りたい・・・」
「わかった。でもちょっと待って。」
そういうと仁は洗面室からメイク落としの一式を持ってきてくれた。
「化粧だけでも落とさないと、明日肌がぼろぼろになるだろう。」
慣れた手つきで奈央の化粧を落としていく。
「ありがとう・・・」
心地よい手つきに奈央は目を閉じたまま眠りに落ちそうになる。
「仁・・・」
「ん?」
「私、絃の夢見たの・・・」
「・・・そっか。」
「うん。」
「どんな夢?」
「絃にギターを教えてもらう夢。」
仁も奈央と絃が絃の部屋にこもってギターの練習を始めたころを思い出していた。
「奈央、一生懸命だったよな。」
「・・・うん。楽しかったな~あの頃。」
「あぁ。」
半分夢の世界に再び落ちそうになりながら話をする奈央を仁は複雑な表情で見つめる。