「花霞ちゃん?」
 「それは椋さんのせいではないです。だから、ごめんなさいはダメです」


 花霞は、彼を説得するように言うつもりだったけれど、怒りの気持ちが溢れでてしまった。
 その様子に、椋は驚きを隠せない様子立ったけれど、それでもしっかりと花霞の話を聞いていた。


 「それに、私、もう怒ってる事もありますよ。遥斗さんの偽者のメールが届いている事。椋さんが悩んでいるのに話してくれなかった事。気づいてたけど待ってました。椋さんが困っていたら助けになりたいんです。」
 「でも、君に心配をかけてしまう」
 「でも、じゃありません!」
 「ふぁ……ふぁふふぃふぁん?」


 花霞が彼の頬を掴んだため、椋の口から変な声が出てしまう。
 けれど、花霞はやめなかった。


 「私たちは本当の夫婦になったんだよね。………話して欲しかった」
 「…………花霞ちゃん」


 花霞は彼の頬から手を話して、椋の唇に指で優しく触れた。
 その言葉は先ほどまでの強気な物ではなく、切ないものだった。

 椋は花霞の本音を聞き、申し訳なさそうに名前を呼び、花霞の手を取った。


 「ごめん………謝るところを間違ってしまったね。………君に頼らないで一人で悩んでいたなんてバカだったな………。こんなに心強い妻がいるんだから」
 「………なんか、強い妻って恐い気がするけど………」
 「そんな事ないよ。可愛くて強い、自慢の僕の妻だよ」
 

 椋は花霞の左手を取り、薬指にはめられた結婚指輪に口づけた。
 謝罪と感謝を込めて。

 それを見て、花霞は「わかってくれてよかった」と、安心した様子で微笑んだ。

 そして、椋を見てまたニッコリと微笑んだ。


 「けど、大切な旦那様を悲しませた犯人が1番許せないの。」
 「え…………花霞ちゃん?君は何を考えているんだ?」


 椋の疑問の声に、花霞は何も答えずにただ笑顔を見せるだけだった。