「お願いだから、他の男にやさしくしないで。俺だけを見ていて…………」
 「…………椋さん」
 「君はとても優しい。………誰でも優しくするのはいいことだけど、それに勘違いをする男もいるはずだ。…………これ以上、君に嫉妬してしまうと、俺はどうにかなってしまいそうだよ」
 「ごめんなさい…………」
 「俺を困らせる花霞ちゃんには、またお仕置きが必要かな?」
 「椋さんっ!」


 椋は冗談なのから本気なのわからない事を言葉にするが、少しだけ表情が和らいだのを感じて花霞は思わず微笑んでしまう。
 心配で仕方がなかっただろう椋が、花霞を気遣っての言葉だとわかり、優しさを感じた。

 花霞は彼が自分に嫉妬してくれるのを嬉しいと感じながらも、申し訳のない気持ちにもなった。
 もし、花霞と椋の立場が逆だったとしたら。
 それを考えると、椋が後輩の相談をしているのを目撃してしまった事を思い出してしまう。
 その時は、不安になり激しく嫉妬したものだった。
 彼にもその思いをさせてしまっているのはわかっている。
 けれど、花霞にも考えがあるのだ。

 少し考えたのち、花霞は彼に謝罪するだけで言葉を止めた。

 
 「俺も………本当にごめん。危険な目にあっているのにすぐに駆けつけられなくて。電話に出ないことから少し不安だったから急いで自宅に戻ったんだ。…………花霞ちゃんが無事で本当によかった」
 「…………うん。心配かけてごめんない」


 2人はお互いに謝りながらも、頭の中ではそれぞれに考えを巡らせていた。


 どうやって解決していくか。
 その思いだけは同じだった。