2人の自宅に戻り、玄関の扉をしめた途端。
椋は、花霞の体を引き寄せ自分の胸に閉じ込めて強く抱きしめてきた。
突然の事に、花霞は驚き目を大きくして彼を見つめた。けれど、彼の温かい体温と早くなった鼓動、そして香りを感じた途端に、目から大粒の涙が溢れ始めた。
自分の家に戻り、大好きな人の腕の中にいる。その安心感が、花霞の緊張の糸を切ったのだろう。ボロボロと泣きながら、先ほど起こった事を思い出しては、また体をブルブルと震えさせしまう。
「………怖かった……………椋さん………」
「もう大丈夫だから。花霞ちゃん………俺がいるよ」
「…………来てくれて、すごく嬉しかった。」
「ごめん、遅くなってしまって…………」
花霞は泣き顔のままに彼を見つめる。
すると、椋は頬や目尻に溜まった涙を指ですくってくれる。
その表情はまるで、椋が花霞を傷つけたかのように、申し訳なさそうに悲しむものだった。
「あの………椋さんのせいでは………それに、蛍くんが来てくれたし………」
「あの男が花霞ちゃんを助けたのはわかった。蛍って奴がいなかったら………って考えると恐ろしいし、感謝しないとって思う。だけど…………」
「椋さん?」
椋は花霞の頬に手を置いて、瞳を見つめたまま、苦しんだ表情で花霞に訴えかけた。



