花霞は恐怖により頭が真っ白になっていた。
 蛍の言葉も頭に入ってこない。
 カタカタと震える体を自分で手で抱き締めるしか出来なかった。

 蛍は、道路に散乱していた花霞の鞄の中身を広い、鞄に入れていってくれる。幸い車に踏まれたものもなかったようだ。


 「家まで送ってもいいですか?心配なので………」


 花霞のバックを蛍から受けとる。
 けれど、花霞はどうしていいのかわからずにいた。

 一人でまたこの夜道を歩くのは怖い。
 けれど、蛍が一緒に家までくるのは………。
 花霞はカタカタと震えながら、目を泳がせた。

 大丈夫。大丈夫と言い聞かせて、蛍を見上げる。

 蛍は心配そうに花霞を見ている。
 花霞は、どうすればいいのか………。
 彼を見つめるしか出来なかった。


 「花霞ちゃんっ!」
 「あっ…………椋さん………」


 自分を呼ぶ愛しい声が耳に入った。
 静かな夜道に足音が響く。その音が近づき彼の姿に椋はホッして顔が緩んでしまう。
 花霞はよろよろと彼に近づくと、椋が「よかった……」と、安堵の吐息をもらしたのがわかった。


 息を深く吐き呼吸した椋は、花霞に駆け寄った。そして、花霞を抱き寄せながら、「よかった………会えて………」と、耳元で言われる。いつもの彼の声を聞いて、花霞の体の力が一気に抜けるのを感じた。