まっすぐ滝川を睨み付けるように見る椋に、滝川は苦い顔を見せた。
 滝川は「悪かった。栗林は俺の考えすぎだ」と椋に謝罪した。
 けれど、滝川は誠に無実だという証拠がないのであれば、彼から疑いの目から外すことはないだろう。
 それは上に立つものとして、最悪の結果を考えなければいけないための、疑心なのだろう。


 「何はともあれ、狙われているのはおまえだ。だが、あまり気負いすぎるなよ。今回は、警察の任務だ。おまえ一人で解決するものではない。責任を取るものでもない。…………覚えておけ」
 「……………はい」


 滝川の言葉にハッとしてしまい、椋は返事をするのが遅れた。

 どうしても、少し前の自分のように一人で何とかしたいと思ってしまっていた。
 遥斗の名前を使ってメールを送ってきた相手を見つけて、何が目的で、どうして自分を直接攻撃してこないか。それを聞きたかった。

 そして、誠を傷つけた罪を償って欲しい。そのためには、自分が何とかしないといけない。

 そう焦ってしまっていた。


 けれど、今は警察にいるのだ。
 仲間たちの力を借りられる。
 それが、どれだけ力強いのかを椋は感じていた。こうやって相談できる人がいて、これからどうやって動いていくのか皆で考えていき、そして、犯人を見つける手がかりを見つけてくれる人がいる。

 今までは全て一人でやっていたのだ。
 本当に心強い。
 椋の表情には少しだけ安堵が見えた。

 しかし、それも一瞬だった。


 「ただ心配なのは、新しいメールのおまえの大切なモノを貰いますって言葉だが………鑑、おまえの大切なものっていえば…………花霞さんには連絡は取れたのか?」



 その言葉に、椋の思考も体も一気に凍りついたように冷たくなった。