滝川は遥斗が使っていたメールアドレスをメモした。滝川もアドレスには入っているはずだが、椋に届いたものを見てもらうのが確実だと思い何も言わなかった。


 「実は、栗林のスマホから情報が取られていた形跡があると、さっき連絡が入ったんだ。おそらく、栗林が狙われたのは………」
 「俺の情報を抜くため、ですね」


 やはり目的は自分なのだと、椋は大きなため息をついた。
 椋に恨みがあるとなると、檜山関係しか思い当たらなかった。麻薬組織に潜入捜査で入っていた事はバレているだろうが、それが鑑椋という人間だとは知られていないはずだった。

 けれど、復讐のために檜山を直接狙った事で、顔が割れたのだろう。あの事件の時に逃げ残った奴がいたのだろう。


 「あの事件後に警察に入った者も徹底的に調べる。…………おまえの部下もそうだというのを忘れるなよ」
 「なっ…………!誠は怪我を負っているんですよ?そんな事………」
 「元警察官である遥斗のメールアドレスを不正に使えるためには、よほどの知識がないと難しいのではないか?………サイバー課にいるような、ネット関連の知識が豊富な人間が、檜山達の組織にもいたはずだったな」
  

 確かにあの組織にも警察のサイバー課のようにPC画面を睨み付けて、カタカタとキーボードを打って見えない敵と戦っている奴らはいた。
 そこに、誠が居たというのだろうか。
 椋にはそんな風には到底思えなかった。
 
 憧れだと言っていたのも、作戦前緊張して体が高くなっていたのも、自分が率先して動こうと爆弾が置かれた扉を開いた時とも。
 彼には、何も不審な部分などなかった。

 なかったと、椋は信じていた。