警視である滝川の突然の登場に、椋も他の警察官も驚き、立ち上がって敬礼をする。すると、滝川「いいから、仕事してくれ。俺は鑑に会いに来ただけだ」と、言って他の人達をすぐに座らせた。


 「腑抜けた顔してんだ。行くぞ」
 「どこにですか……」
 「話聞かせろ」


 滝川の言葉は強いものだった。
 こうなっては断っても彼は許さないと椋は知っていたので渋々滝川に後についていった。




 滝川が向かったのは、空き会議室だった。古びたパイプ椅子に滝川が座ったので、椋も向かい側に椅子を出して座った。


 「今回の作戦内容と栗林が怪我を追った状況を教えてくれ」


 滝川がそう言ったので、麻薬組織の隠れた拠点を捜査したこと、誠が他の部屋を開けようとして際に爆発が起こった事を伝えた。
 すると、滝川は苦い顔をした。


 「………なるほどな。情報が漏洩していたか。そして罠まで仕掛けられてるとは。警察も嫌われた物だな」
 「…………」
 「栗林の状態は?」
 「火傷も酷くなく、足の怪我も深くはなかかったので軽傷です。ただ頭を打った可能性があるので検査するそうです」
 「………不幸中の幸いだな。ったく、不注意に部屋を開けるからだ。気を付けてもらわなければならないな」
 「俺がしっかりと注意をしていなかったのが悪いです。事前に何かおかしいと違和感を感じていたのに………」
 「それを上には報告したか?」
 「いえ………」


 椋が悔しそうにそう言った姿を、滝川はいつもの無表情で見つめていた。
 普段ならば「しっかりしろ!」と怒鳴られる所だが、この日の滝川は何かおかしかった。