「花霞さん、この黄色のお花は何て言うんですか?」
「………え?」
「この小さく可愛いお花です。」
普通に下の名前を呼ばれた事に少し驚いていたけれど、目の前の男はいたって普通に質問しているだけのようだった。
顔が整っているし、人懐っこい性格なので、女の人に慣れているのだろうと思い、花霞はそれ以上は気にしないことにした。
「それはミモザの花ですよ。初夏の花になります。花言葉は、優雅、友情。黄色の花言葉は秘密の恋、です」
「へー…………秘密の恋、ですか」
そういうと、彼は花霞の手元を見つめてから、にっこりと微笑んだ。花霞はその意味がわからずに、彼を見るが彼は何も教えてはくれなかった。
そしてブーケのお金を払い終わると、その男は「今日はありがとうございました。おうちに飾りますね」と言って、ブーケを持って立ち去ろうとした。
けれど、彼は振り返って花霞を見た後に綺麗な顔で微笑み、「ほたる、です。」と言った。
「ほたる………?」
「僕の名前。蛍って言うんです。よろしくお願いいたします。花霞さん」
そういうと、ブンブンと大きく手を振ってから彼は駆けて行った。



