そんな話が終わったタイミングで、店内にお客さんが入ってきた。
 若い男性で、黒髪を長めに切り揃え、顎がシュッとし、切れ長な目が印象的な人だった。
 男性が店に入るのは緊張するようで、キョロキョロする人が多かったけれど、その男性は堂々と店内を見ていた。


 「いらっしゃいませ。プレゼントでお探しですか?」


 栞がその男性に笑顔で声を掛けた。
 男の人が花屋に入るのは女性にプレゼントを贈る場合が大半なのだ。そのため、栞はそのように声を掛けた。
 すると、その男性は栞を見て上品に微笑んだ。


 「あ、違うんですけど………ブログの……このブーケを作った方は、あなたですか?」


 その男性はこの店のブログの写真を栞にみせて質問してきていた。SNSを見てくる人は多いので、ありふれた光景だった。
 花霞は、それを見ながら他の仕事を続けた。

 
 「鑑さん。お客様だよ」
 「え………?」


 対応していた栞が、花霞を呼んだ。
 栞は嬉しそうに、「SNSで花霞のブーケみて気になったんだって。ぜひ作って欲しいって」と教えてくれた。

 花霞は驚きながらも、やはり自分が作ったものを見て来店してくれるのは嬉しくて思わず笑顔になってしまう。


 「ありがとう、いってくるね」
 「うん。よろしく」