「…………この場所に来るのが怖かった。君の傷跡を見るのが悲しかった。………自分のせいだとずっと攻めてきたのかもしれない。でも、それは当たり前の事で、だからこそ君を一生をかけて守ろうと決めたんだ。それは、今でも変わらない。」
「椋さん…………」
「でも…………君のおかげでラベンダーの花が1番好きな花になりそうだよ」
花霞が少し体を離して彼を見上げると、椋の頬には一粒の涙が流れていた。
けれど、それと似合わないほどの満面の微笑みで花霞を見ていた。
彼に自分の気持ちは伝わった。
椋の気持ちが変わった。
それがわかって、花霞も鼻がツンッとして涙がこみ上げてくるのを感じ慌てて彼の胸に顔を埋めた。
「毎年この時期にここに来よう。当時の気持ちも今の気持ちも忘れないように」
「うん!」
椋の素敵な提案に、花霞はすぐに賛成の言葉をあげた。
紫の花がゆらゆらと風に揺れている。その時、2人は先程より強いラベンダーの香りを感じた。花たちも、その提案も喜んでくれているようだと花霞は思った。
花霞は心の中で、ラベンダーたちに「ありがとう」と伝えた。
街で偶然気づいた誰かのラベンダーの香水。それが花霞を椋の元へ導いてくれたのだ。
これからも、彼と一緒に過ごす時はラベンダーの香りを纏おう。
花霞は彼に抱きしめられながら、ラベンダーの花達を見つめてニッコリと微笑んだ。