そして、きっと自分を傷つけたことをずっと彼は気にしているのだと思うと、花霞は辛かった。
 大丈夫だよ、と伝えたかった。
 だからこそ、この場所に2人で来たかったのだ。

 溢れる思いを止めることなく花霞は言葉にした。握りしめる手の力は強くなってしまっているはずだ。けれど、椋はまっすぐに花霞を見てくれていた。


 「それに、ここで私を助けてくれた。私が椋さんを助けたんじゃないよ。私は椋さんに会いたかったから来たの。守りたかったから来た。………そんな私を選んで幸せにしてくれた。それは椋さんが私にしてくれたんだよ。」


 花霞は、感情が高まり目が潤んできてしまう。けれど、彼の瞳をまっすぐに見つめる。椋の瞳はとてもキラキラしている。花霞の大好きな目。
 その目にも、うっすらと滴が溜まっているのがわかった。


 「………ねぇ、椋さん。ラベンダーの花言葉の1つに「あなたを待っています」っていうのがあるの。………私はあなたを待っていた。本当の椋さんに会うのを、待っていたのかもしれない。ぴったりな花言葉ですよね。だから、この場所を大切にしたいんです。これならも、ずっと………」

 そう言うと、椋は花霞の肩を腕で引き寄せて、そのまま自分の胸の中に閉じ込めた。
 そして、声をつまらせながら「………ありがとう、花霞ちゃん」と、言葉をくれた。