その日は、そんなに気温も高くない日で、風を吹いていたので散歩には丁度良い気候だった。2人は手を繋ぎながらラベンダー畑を見てあるいたり、写真を撮ったり、休憩してベンチでお茶を飲んだりとゆったりとした時間を過ごした。

 花霞は見渡す限りの紫色の景色に見いってしまい、興奮してしまっていた。それを見て、椋は「本当に大好きなんだね」と、微笑んでくれる。目の前には大好きな花たちがあり、香りもとても穏やかで、隣には愛しい旦那様がいる。
 それがとても幸せだからこそ、あの時の事を忘れないようにしたいと強く思った。

 花霞は、ラベンダー畑を歩いている時に立ち止まった。奥の方まで来ていたので、周りには人はいない。突然止まった花霞に椋は心配して、「どうしたの?」と聞いてくる。
 花霞は両手で繋いでいた彼の手を握りしめた。


 「この場所であった事を思い出しても、後悔なんてしないで………欲しいの」
 「花霞ちゃん………」
 「椋さんが遥斗さんを大切に想っていた事だからのその結果、復讐になってしまった。それは確かにダメな事かもしれない。けど………間違いだと気づいて新しく動き出すきっかけになった場所がここだから………。この場所を思い出して、悲しいことを思い出さないで」


 花霞は、ここに来るまでに彼に何を伝えればいいのかずっと悩んでいた。
 椋はきっと、結果的に花霞を傷つけてしまった事を悔やんでいると気づいていた。だからこそ、このラベンダー畑に来るのを渋っていたのだろう。確かに、花霞も怖いことがあったこの場所に良いイメージを持つことは難しかったし、今でもその場所にいれば震えてしまうかもしれない。
 
 けれど、この場所での出来事があったからこそ、今彼の隣に居る事が出来るんだ。そう思えると、このラベンダー畑がとても良い思い出の場所になるように感じたのだ。