花霞から初めて聞く言葉に、椋は嬉しくなり思わず微笑んでしまう。
 花霞に褒められたり嫉妬されたりすると、椋は彼女を強く抱きしめたくなるぐらいに嬉しかった。
 彼女はとても魅力的で、いつも周りの男達を魅了してしまう。蛍がいい例だ。誰にでも優しく微笑み掛ける花霞はとても素敵だけれど、椋はハラハラしてしまう。

 もちろん、花霞が自分だけを愛してくれているのは十分に伝わっている。
 けれど、好きだからこそ不安になってしまうものだった。


 「………本当はね。ずっとずっとこうやって椋さんとくっついて居たいの。抱きしめて欲しいし、その………椋さんを感じたいとも思ってて………でも、せっかく新婚旅行に来たんだから、楽しまなきゃいけないとも思ってて………だから、海に入ったりして我慢してたんの………」


 顔を真っ赤にしてそう言う花霞の姿に、椋はドクンッと体が震えた。
 彼女を好きになって何年も経つけれど、花霞はいつもこうやって椋を惑わせる。
 可愛くて、愛しくて、そして椋の心をかき乱す。


 「………花霞ちゃん。その言葉はズルいよ…………」
 「ん………椋さん………」

 花霞の唇を舐め、更に深いキスを落としながら、彼女の体を撫でるだけで甘い声が上がる。
 椋からの甘い誘惑を待っていたと聞いたら、椋がそれを止めるはずもない。


 「俺も同じ気持ちだったよ。………だから、ずっとくっついていよう」
 「うん………椋さん……」
 「愛してるよ、花霞ちゃん………」
 「私も、愛してます………」


 うっとりとした瞳で名前を呼ばれ、自分を求とめてくれる。
 それがとても嬉しくて、椋は何度も何度も彼女の唇を求めた。

 2人の旅行はまだ始まったばかり。
 いつもとは違った、ゆったりとした甘い時間が流れていた。