花霞は涙を流し続けた。
 そんな花霞を、椋は優しく抱きしめてくれた。


 「花霞ちゃん。………何が1番最善だったかは俺もわからない。けど、蛍が最後に君に見せたのは笑顔だったはずだ。………それはとてもすごい事だと思うよ。………自分の罪を認めて裁きを受けに行く時、それを受け入れようとしたんだ。復讐をしようとしていた人間がそうやって心を変えられるなんて………花霞ちゃんはすごいよ。きっと、蛍は君に出会えて良かったと思ってるはずだよ」
 「………そう、なのかな?蛍くんは、そう思ってくれてるかな………」
 「あぁ。蛍にとって「ほたる」と呼んだのは大切な遥斗だけだ。その呼び方を君に教えたんだ。無意識だったかもしれないけど、君にそう呼んで欲しかったんだ。…………きっと遥斗と同じように、大切にしてくれる人に会いたかったんだよ」
 「…………っっ…………椋さんっっ」


 花霞は、椋の体に抱きついた。
 そして、声を出して沢山泣いた。

 一人で彼を助けようとした緊張感。
 誠や椋に降りかかってきた事件。
 蛍と対峙した時の恐怖。
 そして、蛍の話しを聞き、真実を知った時の切ない気持ちと、不安。

 それらが花霞にのし掛かっていたのだ。
 
 花霞は、先程の蛍のように泣き続けた。
 椋はその間、ずっと「大丈夫だよ」と優しく声を掛け、花霞を抱きしめてくれていた。


 
 お風呂から上がった後、花霞は椋の腕の中でぐっすりと眠った。


 緊張の糸がやっと切れたのだった。
 ベットの中で感じるのは、ラベンダーの香りと椋の温かさ。


 きっと、また笑顔の蛍に会える。
 遥斗が見守ってくれているのだ。
 きっと、大丈夫。

 そう信じて花霞は目を閉じるのだった。