それが、椋が檜山を奇襲し殺そうとした日だったというのだ。同じ日に別の人物が同じ人を殺そうとしていた。恐ろしい偶然だった。


 「俺は檜山の車に爆発物を仕込んでたんだよ。取引が終わった後に、麻薬と一緒にぶっ飛べばいいって思っていた。けど………」
 「俺が檜山を奇襲して、警察も介入して組織の奴らと檜山は逮捕された、か」
 「あぁ、そうだよ。おまえさえいなければ、檜山を殺せたんだ!今もあいつは生きている。遥斗さんをあんな酷い目に合わせておいて、生きてるだ!………おまえだって、遥斗さんの仇をとりたかったんだろ!?だったら、さっさと檜山を殺せよっ!」


 大声を出して、強い言葉で遥斗をけしかけるがそれを椋は冷静に聞いているようだった。


 「俺が檜山を殺したとして、檜山の家族が俺を恨んで俺や花霞ちゃんを殺したらどうなる?俺が殺されるならいい。けど、花霞ちゃんが人を殺すかもしれないし、殺されるかもしれない。…………俺はそんな事は望んでない」
 「…………椋さん」


 椋さんが殺されてしまったら。自分はどうするのだろうか。椋のように恨み苦しみ、復讐したいとは決して思わない、とは考えられないだろう。
 大切な人を亡くせば、人は悲しみをぶつけなければ心が壊れてしまうのだ。