『ハルトが警察のスパイだという噂は知っているか?』
 「え…………」


 蛍は何を言われたのか理解出来なくなるぐらいに困惑した。
 ハルトが警察のスパイ。
 そんな噂は聞いたこともなかったし、疑った事もなかった。
 蛍が絶句し、声が出なくなっているとわかった檜山は『知らなかったか』と、ため息混じりに声を吐き出した。


 「そんな、ハルトさんがスパイだなんて………」
 『あいつは仕事も出来る男だったから、俺も頼りにしていたんだがな………』
 「何かの間違いです!ハルトさんが、そんこと………」


 蛍が声を上げると、檜山は電話口から『そこでおまえの出番なんだよ』と言った。
 檜山が蛍に頼みたい仕事。蛍はなるほど、と思った。


 『ハルトの素性を調べてくれないか。それと行動も監視して欲しい。もちろん、直接ではないぞ』
 「………監視カメラですね」
 『そうだ。………何かわかったらすぐに連絡くれ』
 「わかりました」


 檜山の電話が切れた後、蛍はスマホを握りしめたままPCの画面をボーッ見つめた。