わたしの腕をひっぱって引き寄せる。
翔平ちゃんの腕、力強さ、心臓の音、息遣い、匂い。
全部全部忘れないように。
これが“最後”になったとしても。
後悔がないように。
「絶対、帰ってくるから」
「うん…っ」
「うちで、待ってて」
お互いにずっと……家に着くまでずっと、強く抱きしめ合った。
車をおりる瞬間も、手を繋いでいた。
その手が離れる瞬間の、寂しさ、辛さ。
きっと感じてるのはわたしだけじゃない。
大丈夫。
右側に翔平ちゃんのいない喪失感に潰されそうになりながら、わたしの翔平ちゃんの帰りを待ち続ける日々が、また、始まった。