……どこからか吹く風が冷たい。
頭を誰かが撫でる。
その手が頬へと流れ、首筋をかすめる。
「しょ…へーちゃ…?」
言葉にならない声。
それでも。
「気が付きましたか」
返事が返ってくる。
ゆっくり目を開ければ。
いつものように微笑む翔平ちゃん。
「…ここ…?」
「間違えてお酒の方飲まれたんですよ、おかげでお嬢にはお酒飲ませられないことがわかりました」
…そうだ。
なんか突然変な気分になって。
「気分はどうですか」
「頭、いた、い」
「もう少しゆっくりしててください、もう始まりますから」
何が?そういう前に。
大きな音とともに、翔平ちゃんの顔が光に照らされた。
夏祭りの1番の醍醐味。
「花火…」
「ここが穴場なんですよ。少し離れた神社、周りには誰もいませんしね」
花火は、人混みの中、翔平ちゃんと手を繋いで見上げてみたかったな。
なんて言うのもいいけど。


