わたし…そんなことしたっけ?
頭の中で記憶を探る。
だけどそんなことした覚えはない。
「いつしたっけ?」
「あれは…まだ小学生になったばかりのときですかね。あれでもないこれでもない、その結び方はいや、あの子みたいに結んで、浴衣着たいから着せて」
「…いや……なんか…ごめんなさい」
そう言われたら言ったかもしれない…。
わたし以外に同性の人は居なくて。
だから1番近くにいた翔平ちゃんにわがままばっかり言ってた。
…お母さんがいたら、違ったのかな。
「いえ、あの時のわがままがこうして、お嬢をより可愛く出来る力になったんですから」
サクッと最後に髪飾りをつける。
翔平ちゃんが鏡越しに笑った。
「はい、終わりました」
「…ありがとう」
「お嬢はいつも可愛いですが、今日はよりいっそう可愛いですね」
そう言ってわたしの肩に手を置いて、後ろから頬に口付けた。