知りたい。
翔平ちゃんの。
好きな人の事、全部知りたい。
「でも、お嬢が一緒に来てくれた」
「わ、たし…?」
「お嬢が一緒なら平気だと何故か思えた。全部上書きできるんじゃないかって。お嬢と一緒だから、消せるんじゃないかなって。」
「…上書きとか、消したりしたらだめだよ」
翔平ちゃんが目を見開いてわたしを見つめる。
「大切に、持ってなきゃ…。お父さんとお母さんとの思い出。上書きなんてしないで」
殺した人の娘が偉そうに言いすぎたかな。
だけど。
消して欲しくなんてない。
わたしとのことは、第1歩として。
お父さんとお母さんとのことは、わたしのこととは別のところにしまっておいて欲しい。
素直に思った。
「そうですね」
「うん」
「また、一緒に来ていただけますか?」
「…ここに?」
「12月が、両親の命日なんです」
「わたしでいいの?」
「お嬢がいいんです」


