お父さんが翔平ちゃんのお父さんと、お母さんを…。
信じたくないし、信じられない。
でも若頭という立場は、普通自分の子どもに任せるはず。
うちには娘のわたししか居ないから、部下の1人だった翔平ちゃんを任命したのかなとか。
勝手にそう思ってた。
きっとわたしだけ知らなかった。
だからあの時、亮くんがわたしに知られ手はまずいと、必死に止めようと叫んでいたんだと理解した。
翔平ちゃんと小さい頃から一緒にいたのに。
翔平ちゃんの事、何も知らない。
わたし、
翔平ちゃんの何を知ってるの…。
「……お嬢…っ!!」
背後で聞き慣れた優しい声が、荒らげる。
また強く、風が吹く。
振り向くと、翔平ちゃんが息を切らしてわたしの方を見ていた。
「…翔平ちゃ」
力任せに抱き寄せられた。
目の前が真っ暗になる。
呼吸をすれば、翔平ちゃんの匂いがする。


