手首を掴んで、隠している顔を覗き込む。
右耳のガーゼが痛々しい。
左耳に口を寄せて。
「…梨瑚」
「ひゃっ」
名前を呼んだ。
体がぴくっと跳ねる。
その反応に、背筋がゾクッとする。
ああ…ちょっとやばいかも。
「梨瑚」
「うるさい…!」
「梨瑚ちゃん」
「…っ……」
「一緒に、寝て欲しい?」
横目に、お嬢がこくんと頷くのがわかった。
お邪魔しますと言って、ベッドに横になる。
腰と、頭に手を回してぎゅっと抱きしめた。
細すぎるお嬢にもっとちゃんとご飯食べさせよう、退院したら好きな物作ってあげよう。
「翔平ちゃん…す、き」
「うん」
「それだけ?」
「それだけって?」
「なんか、他に…」
「なんて言って欲しいの」
「…わかんない」
そう言って、俺の胸に顔を埋める。
お嬢の心臓の音が聞こえる。
異様なくらい早い。


