やっと俺の顔を真っ直ぐ見つめてくれる。
「組長に拾っていただいて、お嬢に出会って。強くしていただいて、ほんとに感謝しています」
「…お前は、変な奴だな」
そう言いながら、口元が緩んでいるのを見て気持ちが伝わったのだと感じた。
今の生活に不満は一切ない。
復讐しようなんて思ってもいない。
一生この人に付いていこう。
お嬢を守り抜こう。
随分前に、そう誓ったんだ。
「お前がいてくれてよかったよ」
「はい?」
「梨瑚の事だ」
組長の視線がベッドの方を向く。
日本一と呼ばれる組の主が、1人の父親になる顔をしていた。
娘にしか見せない優しい顔。
「雪乃が死んで、どうしていったらいいか迷っている時に、お前を連れてきた」
「世話をしろと言われた時は、無責任だと思いました」
「そうだろうな…でもお前が適任だと思ったんだよ。年齢も近かったしな、正解だったろ?」


