「それで、取ってきたわけか」
「はい」
病室とは思えない清潔な空間。
一人用のベッドにしては大きすぎるそこで、お嬢は目を閉じていた。
テーブルを挟んでソファーに座っている組長の目の前に、ビニール袋を置く。
ビニールの結び目には血が滲んでいた。
「申し訳ございません、約束を果たせなくて」
「連れ去られた時のものなんだろ?お前のせいじゃない」
傷一つ付けず、組長の元に。
約束をしたにもかかわらず果たせなかった。
検査の結果、お嬢の右耳の鼓膜が破れていた。
自然に治ることがほとんどだそうだが、お嬢の場合、損傷が酷く手術をした。
お嬢の右耳はガーゼで覆われていた。
「………」
「組長」
さっきから話していても、一切目を合わせない組長。
まだ、気にしているのだろうと察した。
「俺は感謝してるんです。親父の組は弱かった、だから壊滅させられた。俺はより強い組に入った、ただそれだけです」


