「お疲れでしょう、おやすみなさいお嬢」
「うん…翔平ちゃんは…?」
「もう少しやることがありますので」
「すぐ帰ってくる?」
まだ虚ろな目で、右手は俺のジャケットを力なく握っている。
頭を撫で、頬にすべらせる。
大輝が触った場所を上からなぞる。
他の男に触られたと思えば思うほど、自分は嫉妬心が強いのだと思い知らされた。
「次に目を覚ました時には、傍にいますよ」
「うん……」
「おやすみなさい」
ゆっくりと目が閉じる。
壊れないように、だけど強く抱きしめる。
「……お嬢を病院に」
「かしこまりました」
お嬢を組員に任せる。
お嬢が階段の向こうに消えていったのを確認して、俺は取り押さえられている大輝のもとへ歩み寄った。
肩、太ももから出血し、顔には汗が吹き出していた。
まだ闘争心はあるらしく、睨みつけてくる。


