「梨瑚…!!」
「…ん…っ」
体をぴくっと震わせて、ゆっくりと目が開いた。
その瞬間、体中の力が抜けそうになる。
よかった…。
間に合った。
「…しょう、へーちゃん」
「怖い思いをさせて、申し訳ございません」
「…かった」
よく聞き取れず、お嬢の口に耳を寄せる。
「…会いたかった……」
「っ!!」
会いたかった。
冷たい体に、温かいものが入ってくる。
胸が苦しい。
だけど、俺も。
「俺も、会いたかった」
同じ気持ちだった。
俺にこんな想いをさせるのは、お嬢だけ。
自分にとって特別で。
こんなに存在が大きくなっていたなんて気づかずにいた。
…気付かないふりをしていたのかもしれない。
俺じゃない人を好きになれば、この世界から出ていくことが出来る。
こんな厳しく、つらい世界にいなくて済むのに。


