透が送ってきた住所は、車を走らせること30分。
今は使われていない、廃ビルだった。
部下に指示を出し、裏へ回らせる。
30名の部下を後ろに、乗り込む。
「…早かったね、翔平」
「…大輝(タイキ)」
3階まで上がったところで、声をかけられた。
広い部屋の中、一番奥に小さい頃の面影を持ったままの人物が椅子に座っていた。
…お嬢を抱えて。
「覚えててくれたんだ、嬉しいなー」
不気味なほどの笑みを浮かべながら、俺をむかえ入れる。
黒いスーツのせいか、茶髪が目立つ。
大輝は、神崎組の元組員。
俺と同い年で、両親が殺された以来、初めて顔を合わせた。
「今すぐ、お嬢を離せ」
「久しぶりに会えたのにもう本題に入っちゃうの?もう少し話そうよ」
「話すことなんてない」
「俺はたくさんあるんだけど」
お嬢の頭から頬へ指を滑らせ撫で回す。
胸くそ悪い。


