透とは幼なじみで、たまに連絡を取っている。
頻繁に取ると、透の立場が危うい。
「うちのお嬢が連れ去られた。車のナンバーを送るから居場所を割り出せ」
「それはそれは、大変なこっちゃ。お前の家の周辺から発砲音がしたって通報が入ってるぞ」
「場所だけ教えてくれればいい」
「わかった、10分後にメールする」
「5分だ」
透はまだ何か言っているようだったが、電話を切りジャケットのポケットにしまう。
ビルから出て、黒い車に乗り込む。
車の扉が閉まるのと同時に、メールが届いたと電子音が知らせる。
「…居場所がわかった、急げ」
「かしこまりました」
早く。
早く行かないと。
不安が募る。
早く、会いたい。


