俺の目の前で止まり、しゃがんだ。
怖かった。
…今度は俺が。
「そんな震えてたら、大切な人を守るなんてできない。俺が教えてやる」
拳銃を持つ手に触れて、ゆっくりとそれを取った。
いつか、いつか必ず。
復讐してやる。
その時が来るまでは、大人しくしていよう。
そう、そう決心していたはずなのに。
「しょーへーちゃん!」
たった1人の女の子に、変えられてしまった。
俺をひきとったすぐあと組長の奥さん、雪乃さんが女の子を出産した。
…1度も、我が子を抱くことなく。
「おかえりなさい、お嬢」
「あのねあのね、きょうね!!」
組長に命令されてから、ずっとお嬢の世話係をしていた。
最初はなんでこんなこと、と思っていた。
保育園のお迎えに行くなり、俺の顔を見ると駆け出すお嬢は黄色い、小さなカバンを開ける。
そこに小さな手を突っ込んで。
「これ!みつけたの!」
手に握られていたのは、四つ葉のクローバーをしおりのように加工したもの。


