対立の平行線が続いてからはや2週間。
このまま、平行線のまま今回は終わろうかとそういう空気が漂っていた。
「そろそろ戻るか」
「はい」
組長の一言で、今回の件は終了。
やっと。
やっと家に帰れる。
『翔平ちゃん!』
満面の笑みで、茶色の長い髪の毛をなびかせながらそう呼ぶお嬢の顔が浮かぶ。
小さい頃からずっとお世話してきて。
改めて、大きくなったと成長を感じた。
背や体格だけでない。
最近少しずつ化粧をし始めたこと、オシャレに気を使い始めたこと。
ずっとこの胸の痛さは、子を手放す親のような気持ちと一緒なのだと思っていた。
ピロピロピロ、ピロピロピロ。
組長の着物の中に入れている携帯が鳴る。
家からの着信。
…緊急時以外、ならないはずの電子音。
その場にいた全ての人間が凍りつく。
…家でなにか…お嬢になにかあった。