廊下を歩く足跡が遠ざかっていく。 …誰も来なかったら。 どうなってたのか気になる…! 「わたし、行くね」 「はい、ありがとうございました」 Yシャツを着てボタンをとめながら、でも目線は私に注がれていた。 優しい目。 全部が好き。 わたしがもう少し、大人だったら。 立ち上がって、扉を開けた時。 「お嬢」 愛しい人が呼ぶ。 胸が痛い。 振り返るとネクタイを手にかけて、結ぼうとしているところだった。 「おやすみなさい」 「…おやすみ」 微笑む翔平ちゃんを目に焼き付けて、わたしは部屋を出た。