ポケットから出したのは白い、小さな箱。
パカッと開けて見えたのは、シルバーのシンプルな指輪。
大きさの違う2つの指輪が、電飾の不規則な光に照らされて眩しいくらいに輝いていた。
驚いて翔平ちゃんの顔を見る。
「え……え?」
「結婚指輪じゃないけど、お揃いのものって持ってなかったなーって」
「…なにそれ……ずるいよ…っ」
泣き出すわたしを笑って抱きしめてくれる。
なんなのこの人…。
こんなのずるいよ…ずるい…。
大人ってずるい。
「喜んでくれた?」
「ううー…」
「泣くな、ほら右手出して」
涙で景色が歪む。
ゆっくりと右手を出して、翔平ちゃんが薬指に指輪を入れてくれる。


