「そう…じゃあ、死んで」
冷たく、重たい言葉。
美華さんは隅の方へ歩いていく。
手に何かを持ってまた、わたしの方へ戻ってきた時には鋭いものを持っていた。
きらりと光る、鋭いそれはすぐにナイフだってわかった。
…不思議と怖い気持ちはなかった。
「大丈夫、すぐに楽にしてあげるから」
わたしを殺したって、翔平ちゃんは手に入らないのに。
心は…手に入らないのに。
…でもそこまでして、翔平ちゃんに振り向いて欲しいってことだよね。
ほんとに好きなんだな…翔平ちゃんのこと。
冷静にそんなことを考えた。
「…もっと泣きわめきなさいよ!!!」
「どうせ殺すんでしょ?…抵抗したって一緒じゃない」
「なんなのよ…なんなのよあんた!ほんとにムカつく!!!」
ナイフを振り上げる。
翔平ちゃんにもう逢えない。
まさかわたしが死んで逢えなくなるなんて。
…思ってもなかった。


