体全部で翔平ちゃんがここに居るって。
翔平ちゃんの鼓動と、体温と、触れる唇の感触で胸がいっぱいになる。
これ以上何もいらない。
何もいらないから。
翔平ちゃんを、連れていかないで…。
「しょーへ…ちゃん…」
「ゆっくり目閉じて」
「…ん…」
「目が覚めたら、傍に居るから」
それでも、行かなきゃいけない。
その背中を、わたしはいつか。
泣かないで、見送ることが出来るかな。
「おやすみ、梨瑚」
低く、頭に心地よく響く声。
額に柔らかく温かい感触を最後にわたしは意識を手放した。
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