ましてや翔平ちゃんは若頭。
他の組との睨み合いとなれば、出ていかないわけには行かない。
…これまで、銃撃戦になったことも少なくない。
逮捕者、負傷者、死亡者も出た。
勝利を勝ち取ったとしても、わたし達の組も痛手は負う。
…ほんとはこんなこと、して欲しくない。
お父さんも、翔平ちゃんも、組員のみんなも。
楽しく暮らせればいいのに。
それじゃダメなのもわかる。
…わかってる。
振り返りたくなる思いを押し込めて、わたしは校舎へと入った。
1時間目から6時間目まで、長い長い授業を終えると急いで正門へと向かう。
翔平ちゃんが待ってくれてる。
そう信じて。
「あれ…?」
うちの黒い車。
の、はずなのに付き人は翔平ちゃんじゃなかった。
夕焼けに染る銀色の髪の毛。
「亮くん…」
「おかえりなさい、梨瑚さん」
「…………翔平ちゃん…は?」