「みんなを困らせるようなことするな」
「…別にそんなつもりじゃ」
「大人しく、飯食え」
「要らない」
「じゃあ部屋で大人しくしてろ」
怒った口調ではなく、ゆっくりわたしに言う。
でも目の奥が怒ってる。
普通に怒ってくれればいいのに。
そうやって遠回りにされるとムカつく。
履いていた靴を脱いで、翔平ちゃん、お父さんの隣を通り過ぎる。
大きな音を立てて部屋の扉を閉める。
「…っ……」
自然と涙が溢れ出した。
なんで泣いてるかわからない。
翔平ちゃんの事、美華さんの事、自分自身に嫌気がさして、何もかもが嫌で。
ベッドまで行く気力もなく、その場に寝転がる。
声を押し殺して泣いて…泣き疲れて。
目が覚めた時には。
外は明るくなっていた。


