朝とは違い、スーツ姿も相まって最高すぎる…!
わたしは鞄を手に取って、反対の手で差し出された翔平ちゃんの掌に手を乗せる。
翔平ちゃんは乗せられた手を握り、わたしが立ち上がり、車から降りやすいように手を引っ張ってくれた。
毎日のことなのに。
何百回と繰り返してることなのに毎回ドキドキしてしまう。
わたしが車から降りると、スっと離れる手。
この瞬間は嫌い。
…もう、会えなくなるかもしれない。
そう予感がよぎるから。
「行ってらっしゃいませ」
低く響く翔平ちゃんの声。
太陽に照らされて、翔平ちゃんの黒い髪がキラキラと光る。
「行ってきます」
「お気をつけて」
腰を90度に曲げて、わたしに頭を下げる。
翔平ちゃんに背を向けて歩き出す。
会えなくなるかもしれない。
わたしの世界ではよくあることだ。
組同士のいざこざで何回お父さんが怪我したことか。
それは、翔平ちゃんも対象外ではない。