( …今更怖気付いても…頑張らなきゃ。)

準備室前でももう一度深呼吸する。

( 頑張れ、私…!)


ドアに手を掛け、ひらいた。


普段使われない部屋なので明かりもなく薄暗いが

先輩がいるのがわかる。


「せ、先輩、お待たせしてごめんなさい…!」

「…。

…ううん、俺も今来たばっか、気にしないで。」

やっぱり優しい。

「…あの、私…」

あれだけシュミレーションした言葉さえも

上手く口から出ない。

緊張で手汗がひどい。


「…私…ずっと…」

言わなきゃ、はじまらない

なにも変わらない。

大丈夫、頑張れ…!


「…私、先輩のこと好きです。」

「…」


「はじめて会った時から、ずっと…

今までもこの先も好きです、

私と、付き合ってください…!」

「…。」

…沈黙が辛い。

わがままだけど振るなら振ってほしい…。

言い切ってもまだ心臓がドキドキうるさい。


「…えーと…」

先輩が口を開いた。

「こういうのって自己紹介とかが先じゃないの?

俺、君の名前すらもよく覚えてないし。」

「え?」

「いや、え?じゃなくて。こっちがえ?だよ。」

…あれ?今朝もお話したし…

毎日名前呼んでくれてたのに…?

「え、私先輩に毎朝挨拶するとき、

名前呼んで貰ってますけど…?」


その時、ガラッと扉が開いた。

「小春ちゃん!ごめん、遅くなっちゃった!」


………え?